INICIAR SESIÓN動画を見終え、最高の終焉に笑いが堪えられなかった。僕は実家の冷蔵庫から拝借しておいた缶ビールを開け、渇いた喉を潤した。
――コウダイのライフが全快した! ふぅ~。今の動画のお陰でめちゃくちゃ面白い復讐動画思いついちゃった♪ 早速編集、編集~♪制作時間2時間ほどであっという間に作り上げた『五代建真の不倫クエスト』。そしてついでに作った葛野討伐用の短い音声付静止画。ふふ。これでクズたちを討伐だ!
で、当日。 僕は紀美さんに連絡を入れてスマートウォッチで五代建真の討伐シーンを見せることに。関係者各位を集め、葛野は一課のお偉いさんとして同席、加藤さんもマーケティング課の代表として徴収をかけた。発表したいことがあるからと言って、社長も呼んでおいたし~♪「それでは皆様。お時間となりましたので会議を始めさせていただきます」
アシスタントの僕がノートパソコンを操作をする。
ヤツが徹夜で作ってきた企画を流すんじゃなくて、予めすり替「私、あなたの好きなひとが手出しされないように頑張る! 任せておいて!」「…ありがとう」 バッキンがはにかんだ。うわぁぁぁっ。カッコいい!!(照)「ふーん。おもしろそうじゃん。手伝うよ、私も」北都さんが手を挙げてくれた。「私も手伝いまーす! その代わり、モニターになって欲しいです。このゲームの」 紀美さんがスマートフォンを操作し、アプリの画面をこちらに向けてきた。「ゲーム?」「そう。復讐クエストって言うRPGゲームですけど、これ実は、私が作ったゲームなんです」「えええええっ! すごっ!」 復讐クエストってゲーム…面白そう!「ゲームはできたばかりで、試作テスト運用中です。実際の自分のステータスとか、敵キャラの様子とか、どんどん入力して打ち込んで欲しいんです。うまくいけば本格配信するつもりで、社運をかけて宣伝していくつもりですから!」 へええ……! 紀美さんすごっ。「実際にプレイできるから、テスターとして協力してくれたら嬉しいです」「面白そうですね。ぜひ、やらせてください! こう見えても私も彼も、ゲーム大好きなんです」 家に帰ったら早速プレイしてみよう。「リオ、ノリ、ゲームってそんなにおもしろいの?」 北都さんが聞いてきた。彼女はたぶんゲームなんかに興味がないのだろう。「「はいっ」」 思わずハモったので、紀美さんと顔を見合わせて笑った。話の流れで紀美さんもキンモンをやっているということで、ハンドルネームを教え合った。彼女は”GM(ゲームマスター)”という超絶有名なキンモンプレイヤーだったので驚いた。さすがにGMとは呼びにくいので、そのまま紀美さんと呼ばせてもらうことにした。 紀美さんとは年齢が近いので、話に花が咲いた。少し前、彼女はクズ夫と離婚したそうだ。うちの会社でなんども見かけた爽やかな感じの男は、聞けばとんでもないドクズだったようだ。宇治川先輩に公開処刑され、さぞ恥をかいたことだろう。 宇治川先輩があそこまで力を入れて五代建
「ちょっとまって。加藤佳子って……」北都さんがなにやら逡巡している。「思い出した! コウに聞かせてもらった音声に出てた女の名前じゃん!」「その音声、録音したの私です。航大さんにお渡ししたデータのものです」 紀美さんが言った。「航大さんの奥様と関係を持たれていた葛野という方が、職場のお局とかなんとか…ひどく女性を侮辱した言い方で腹が立ったのですが、加藤さんも問題がある方なのですね」「そうなんです! 実は――」 私はここぞとばかりにお局の不満をぶちまけた。 彼女がいかにマーケティング部の士気を下げていること、優秀な女性社員をことごとく辞めさせていることなど。「私も初日から葛野さんと仲がいいと難癖付けられて、理不尽な攻撃を受けたんです」「で、葛野がいなくなったから、今度はカイにちょっかいかけようって思ってるワケ? 大した女だな、そいつ」 北都さんがお局のことを鼻で笑った。「どうせ性格ブスだよ、そんな女。ヤキ入れてやりたいなぁ♡」 北都さんが指をバキバキぃっ、と鳴らしている。 怖ぁぁぁぁっ! 細い指なのに殴られたら痛そうだな、と思った。 普通あんなに指を鳴らしたりできない。バトル漫画とかゲームでしか見たことないやつ!「で? どんな風に迫られてるの?」「俺、加藤さんに付き合ってくれって言われて、同じ会社に好きな子がいるからって丁寧にお断りしたんです。そしたら昨日、誰か教えてくれるまで帰さないとか言われて会議室に閉じこめられて、マジ監禁されてしまって…。見回ってきた警備の人に助けてもらってなんとか逃げられたんですけど…」 それで帰りが遅かったんだ。 なんてひどい!!(怒) でも、バッキン…好きな子いたんだ……(涙) そうよね。カッコいいしモテるし、当然よね。 あああ、いいなあああ。バッキンが好きな人って誰なんだろ……。(涙) ――リオナは精神的ダメージを喰らった! ――100ポイントのダメージ。ライフが残り僅かだが、怒りパワ
というわけで翌日。大吉酒場にふたりでやってきた。「いらっしゃい!」 店内に入った途端、威勢のいいポニーテールの女性――北都さんが声を上げてくれた。もう一人、ややウェーブがかった黒髪の、とても優しそうな眼をした綺麗なお姉さんがお辞儀をしてくれ、2名様なのでカウンターへどうぞ、と中央のカウンターまで案内してくれた。 揃いの赤と黒の法被には、『大吉酒場』とロゴが入っている。割と手狭な店内は、4人がけの席がきつきつの状態で何席か並んでいる。 今日は金曜日だからもっと忙しいかと思っていたけれど、店内はガラガラだった。お客がいない! だったらカウンターじゃなくて4人掛けの席でもよくない? と思っていたら、テーブルの上はすべて『予約席』という札が付いていた。 なんだ。これから団体が来るのか。そうだよね。金曜日のこんな時間にひとっこひとりいない居酒屋なんておかしいもん。 案内されたカウンターの中央に座った。バッキンが一番奥、その次が私。 なぜ端っこではないのだろうか。まあいいけど…。 とりあえず生ビールを2つと適当な食事をオーダーした。 おしぼりを持ってきてくれた北都さんが私に話しかけてきた。「リオ、また来てくれたんだね。嬉しいよ。隣の彼は?」「こちらの彼は同じ職場の友人で、柾谷櫂(まさたにかい)さんです」「カイね。オーケー。私は東雲北都(しののめほくと)。みんなから北都って呼ばれてるから、そう呼んでくれたら嬉しい。彼女は四谷紀美(よつやのりみ)で、優秀なうちのスタッフ。坊主頭の彼は真田信玄(さなだしんげん)。シンは見た目イカつくて戦国武将みたいな名前だけど、気は優しくていい人だから」 紀美さんと信玄さんを紹介してくれた。「さっそく本題だけど、困っていることがあるの?」「困っているのは私じゃないんです。えっと……」 バッキンのこと、勝手に話してもいいのかな……。チラ、とバッキンを見た。 ああっ。今日もバッキンかっこいい!(違う) 「いいよ。俺も宇治川さんからこのお店のことを聞いたから。困ったことがあったら
「武田さんのことは、俺が守ってやるからな」 バッキンが凛々しい顔で私に告げた。 ――バッキン会心の一撃! ――リオナのハートに100のダメージ! ――リオナはハートライフが0になった! 「あ……ありがとう……」それだけ言うのが精いっぱいだった。「今日またキンモンやろう。いつものワールドで待ってる」 バッキンは私の耳元で囁くと、じゃ、と爽やかに笑って去っていった。 後には心臓がばくばくした私が残された。 どうやら私は自身がレベルアップしたため、バッキンへの恋心までレベルアップ(自覚)させてしまったらしい。 ……まさか、今までバッキンを好きだったなんて。 気が付かなかったよ――!!(叫) 武田さんのことは俺が守ってやるとか、最高すぎん? なにあのかっこいい笑顔。完全陥落だよ。どうしたらいい? 私なんか気が強いしショートカットで女子力0だし、お洒落よりも元気に体動かしてゲームとかする方が好きなんだけど! はっ。モンスター退治したらまたレベル上がって、女子力も一緒に上がるのかな!? そんなわけないよねっ。 バッキンなんて、ぜったい高値の花男だよ。モテるし。 私なんかが攻略できるわけない。 あーん。 どうやったら女子力がレベルアップするのか、誰か教えて――!!(泣) ※ それから暫く月日が流れた。葛野は左遷され、営業一課にいなくなった。その後の行方は知らない。奥様に三行半(みくだりはん)を突きつけられ、離婚したことだろうと想像している。 お局は言っても葛野に弄ばれた被害者側なので、厳重注意に留まった。なのでまだマーケティング部に居座っている。私は葛野よりも先にこっち(お局)を左遷させて欲しか
「葛野君、いったいどういうことかな?」 ファイブスターの社長が現れた! 社長は静かに怒っている模様。(攻撃力2倍)「いえいえあのこれはっ、ですからっ、う、ううぅ、宇治川君が、そのっ、僕にあれこれ指図を…あ、いえ、注意を…受けてですね、その……」 モンスター・クズノは焦っている!「社長! 私、葛野さんから何度も食事に誘われたり、嫌だから止めて欲しいとお願いしても、ぜんぜん止めてもらえませんでした! それを庇ってくださった宇治川先輩にこんな酷いことをして…ぜったいに許せません!!」 リオナの攻撃(口撃)! モンスター・クズノは50のダメージ!「社長っ、僕はそんなことをした記憶はありません! 確かに食事に誘ったことはありますが、それはあくまでも懇親会の範囲でして…決してそのようなつもりでは……」 モンスター・クズノの反撃(言い訳)! しかし社長はいぶかしげな眼でモンスター・クズノを見つめている。 よってダメージ0!「すみません、よろしいでしょうか」 助っ人キャラ・コウダイ(元ATM勇者)の攻撃!「そんなつもりがないというなら、これについてご説明いただけませんか?」 コウダイは必殺アイテム・『葛野と麗華(コウダイの嫁)が逢引している動画』を使った! これには逢引だけでなく、加藤佳子の悪口も吹き込まれていた! モンスター・クズノに大ダメージ! モンスター・オツボネに大ダメージ!「葛野さんは僕の妻によろしくして下さったのですよね? ほんとうに、どうもありがとうございます。どう償われるおつもりなのか、今ここではっきりと申していただけますでしょうか?」 モンスター・クズノは瀕死のダメージ。もはや虫の息!「あぁぁあの……」 みんなの視線がモンスター・クズノに向かう。 彼はこの世の全てが終わったかのような顔で、がっくり膝をついた。「ふ、不祥事を起こしてしまいまして、も……もうしわけございませんでした……」
「宇治川」 しんとなってしまった会議室に低い社長の声が響いた。「君が『売れる食品社(※五代建真が勤める食品会社名)』の素晴らしいプレゼンを見せるから同席したというのに、いったいどういうことかね? さっきの動画はなんだ、あれは」「僕にもわかりません! 彼は徹夜で企画を仕上げるので、ぜひファイブスターのみなさんに見て欲しいとお願いされました。とてもよくできた企画なので、社長にも見ていただきたくお声がけしたというのに…こんなことになってしまい、申しわけございません」 犯人を知っている私は笑いそうになった。 どこまでも悪い男ですね、宇治川先輩……!「いや…宇治川のせいではないことはわかっているが…」 はっ。今、みんながいて、宇治川先輩のこの流れを断ち切る流れ…ここじゃないの! そうだわ。今こそモンスターを倒す時! 私の中でソシャゲのボス討伐のカッコいい曲が脳内で流れた。 ――戦闘開始!! 「あの! 社長に聞いていただきたい音声がありますっ!!」 挙手して大きな声で訴えた。これです、と 社長の方に向けたスマートフォンを高らかに掲げた。――リオナは葛野(モンスター)討伐のための音声を使った!「私のために、宇治川さんがひどい目に遭った画像も一緒に見てください!」 小さな画面に映っていたのは、宇治川先輩が葛野に向かって土下座するシーン。そして音声が流れる。 『葛野さん、少しよろしいでしょうか――……というわけで、加藤さんが武田さんを困らせているので、なんとかしてください』『俺に言われてもなぁ』『付き合っていますよね? 加藤さんと』『付き合う? 冗談はよしてくれ』「ちょ、ちょっと待ってくれっ!! なんで君がそんな音声をっ、で、でででらためなっ」 葛野さんが慌てて止めようと武田さんに向かっていくが、すっと間に割って入った男性に止められていた。あっ♡
その日、建真は結局帰ってこなかった。どうなっているのかはわからない。 一人の朝は平和だった。北都さんから連絡が入っていて、今日の夜に大吉で結果報告を受けることになった。 建真がいないと朝が楽。簡単に朝食を済ませ、空いている電車で会社に出勤。あー最高! 毎日こんな生活したい! すっきりいい気分で仕事がはかどった。多分スキルアップしていることだろう。 そして昼休み。改心した晴奈が、証拠をかき集めてくれたものをすぐ渡したいから会って欲しい、と建真との関係した証拠をUSBに収めたものを持って私を訪ねて来てくれたので、会社近くのカフェで落ち合った。
私の脳内で緊迫感のある戦闘BGMが流れている。 今日は不戦勝で証拠ゲットよ!!「ああ。ただいま」 建真は穏やかな返事を寄こしてきた。あれ。なんかいつもと違うな…。 もっとこう、ほら、いつもみたいに『お前となんかデキねえよ』とか『頭悪いな』とか、そういう類でガンガン攻めてきてよ~! そっちが来ないなら、こっちから行くわよ!!「あの…建真。今月生活費が足りなくて…用立てして欲しいんだけど」「いくら?」 んっ…なに、その返しは!? 思っていたのと違う…(汗)
「そんな……言っていいことと悪いことがあります!」「仕方ありません。妻が娘にそう教えているんです。家庭に僕の居場所はありませんから」 悲しそうに航大さんが俯いた。そんな、ひどいよ!!「航大さん。私もあなたが幸せになれるようにお手伝いします!」 夫を倒すお手伝いをしてくれる航大さんのために、私もひとはだ脱ぎたい。勇者として仲間のピンチを助けるのは当然のこと!「紀美さん、ありがとうございます。一人で家に帰っても居場所もなくて辛いですから、ここで時々愚痴を聞いて下さるとありがたいです。多分僕と妻はもう修復不可能です
「お届け物でーす」 来客を確認すると宅配便のドライバーだった。『山下』と名札の付いた宅配業者のお兄さんから荷物を受け取った。彼は帽子を取って会釈をしてくれる爽やかなお兄さんだった。どこかで見たことがある爽やか青年だけれども、どこで見たかな。思い出せない。うーん…確か彼も魔王とか呼ばれていたような気がする…。(わかる人ありがとう) …まあいいや。爽やか山下さんはとにかく建真とは大違いだった。 受け取った荷物を見てみた。品名はゴルフ用品。私から巻き上げたお金で買ったんだろうか。それとも私が必死に稼いだお金は、全部晴奈への貢ぎ物で消







